現役エージェントが最近感じたこと——「ITテックバックグラウンドがありません」という言葉の裏側
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面談の冒頭、自己紹介が一段落したあたりで、多くの方が少し申し訳なさそうにこう言います。「ITテックバックグラウンドがないんですが、それでも大丈夫でしょうか」と。
私はこの言葉を聞くたびに、まず「この方が持っている専門性は何だろう」と考えます。不安の裏側には、必ずといっていいほど、豊かなキャリアが隠れているからです。
その言葉を口にする方が持っている、本当の専門性
実際に面談でお会いする方々のバックグラウンドを振り返ると、その専門性は非常に多岐にわたります。
- 自動車部品の設計・開発を10年以上担当し、品質基準の策定にも関わってきた方
- 工場の生産管理責任者として、ラインの効率化とコスト削減を牽引してきた方
- グローバルSCMの再設計を主導し、複数拠点の調達・在庫最適化を実現した方
- 研究開発部門でプロジェクトリーダーを務め、新素材の事業化まで携わった方
これらはいずれも、一朝一夕では身につかない高度な専門性です。「ITテックバックグラウンドがない」という一言で、こうした経験の価値が揺らぐわけではありません。
ただ、正直にお伝えすると、転職市場が求めるテーマは確かに変化しています。その変化を正しく理解することが、次のキャリアを考えるうえで重要だと感じています。
企業が求めるテーマは、この数年でさらにDX・AIを中心としたものへと加速しています。
採用基準が厳しくなったのではなく、企業が抱える課題の性質が変わってきた——これが私の率直な見立てです。
DX・AI・ERP・データ活用——増えているのはIT関連プロジェクト
ここ数年、コンサルファームへの引き合いで増えているのは、製造業のDX支援、ERPの導入・刷新、AIを活用した品質管理や需要予測、クラウド移行に伴う業務プロセス変革といったプロジェクトです。
以前は「業務改善」「コスト削減」「組織再編」といったテーマが中心でしたが、今はそこにITやデータ活用の要素が組み込まれていることがほとんどです。クライアント企業の課題が変わったのですから、コンサルファームが求める人材像も自然と変化します。
これは「採用基準の厳格化」ではなく「市場ニーズの変化」
大切なのは、この変化を「IT経験がない人が評価されなくなった」と解釈しないことです。
コンサルファームが求めているのは、ITの知識そのものではなく、事業課題をITで解決した経験です。製造業の現場を知り、業務の実態を理解したうえで、DXやデータ活用を推進できる人材です。現場経験のないITエンジニアだけでは、クライアントの課題を本質的に解決することは難しい。だからこそ、製造業・メーカー出身者の専門性には依然として高い需要があります。
求められているのは、「ITに詳しい人」ではなく、事業とITの橋渡しができる人材です。
「IT」と「事業」は、もはや切り離せない時代になっている
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製造業では、技術・製造・情報システムが別々の組織で動いている企業も多く、「ITは専門部署の仕事」という感覚を持たれる方も少なくありません。しかし、実際の転職市場を見ていると、その境界線はすでにかなり曖昧になっています。
製造業でも進む、ITを活用した事業変革
製造業の現場でも、ITを活用した変革は着実に進んでいます。たとえば、MES(製造実行システム)とERPを連携させて工場全体の可視化を図る取り組み、PLMを活用した開発プロセスの効率化、IoTセンサーによる設備の予知保全、AIを用いた外観検査の自動化——こうした取り組みは、もはや一部の先進企業だけの話ではありません。
これらのプロジェクトを推進するには、ITの知識だけでなく、製造現場の業務フローや品質基準、サプライチェーンの実態を深く理解している人間が不可欠です。現場を知らないITベンダーだけでは、現実に即したシステムは作れない。この構造は、製造業出身者にとって大きなアドバンテージになります。
自動車メーカー出身エージェントが感じた、技術とITの融合
私自身も、新卒で自動車メーカーの研究開発部門に入りました。当時は「技術」と「IT」はまったく別の世界だと感じていました。当時は「技術者」と「情報システム部門」は完全に別世界という感覚があり、ITは「別部署の仕事」という印象を持っていたことを覚えています。
ところが転職市場に関わるようになって気づいたのは、その「現場の技術者」としての視点こそが、今のコンサル業界で最も必要とされているということでした。自動車の開発プロセスを体で知っている人間が、DXプロジェクトの現場で発揮できる価値は、想像以上に大きいのです。
技術とITの融合は、すでに現場レベルで起きています。その変化の中に身を置いてきた製造業出身者は、気づいていないだけで、すでにその融合の一端を担ってきているはずです。
キャリア相談でお伝えしていること——「難しい」より「次の一手」を考える
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「今すぐ転職するのが難しい状況なら、今の会社で何を積むかを一緒に考えましょう」——これが、私がキャリア相談でよくお伝えする言葉です。
今の会社で積める経験が、5年後の選択肢を広げる
コンサルへの転職を検討している方に限らず、5年後・10年後のキャリアを見据えたとき、今の職場でDXやIT関連のプロジェクトに関わっておくことは、非常に意味があります。
転職市場では、資格そのものよりも、「その資格や知識を実務でどう活かしてきたか」が評価されるケースが多いと感じています。社内のDX推進チームに手を挙げて参加する、ERP導入プロジェクトのユーザー側リーダーを担う、データ分析ツールを使って業務改善の提案をまとめる——こうした経験は、職務経歴書に書ける「具体的な実績」になります。
「社内でそういうポジションに就くのは難しい」と感じる方もいるかもしれません。ただ、製造業の現場では、DX推進の旗振り役を担える人材が不足していることが多く、手を挙げること自体がチャンスになるケースは少なくありません。
具体的に関わっておきたいプロジェクトの例
転職市場での評価という観点から、特に関わっておく価値が高いと感じるプロジェクトをいくつか挙げます。
- ERP導入・刷新プロジェクト:SAP、Oracle、その他パッケージの導入や移行において、業務側のリーダーとして要件定義や現場調整を担う経験
- DX推進・デジタル化施策:生産管理・品質管理・SCMなどの領域でデジタルツールを導入し、業務プロセスを変革するプロジェクト
- データ活用・分析基盤の構築:製造データや販売データを活用した意思決定の仕組みづくりに関わる経験
- AI・IoT活用の実証実験(PoC):外観検査の自動化、予知保全、需要予測など、AIやIoTを現場に適用する取り組みへの参画
- グローバルシステム標準化:複数拠点のシステムを統一・標準化するプロジェクトでの業務要件整理や現地調整
これらのプロジェクトに「業務側の人間」として関わることが、IT経験として評価されます。システムを自分で構築する必要はありません。
転職だけがキャリアアップではない——現役エージェントが最近感じること
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エージェントという立場上、転職を勧めることが仕事だと思われることがあります。ただ、正直に言うと、私は「今すぐ転職することが最善」とは限らないと感じています。
特に製造業・メーカー出身の30〜50代の方の場合、今の会社でしか積めない経験があります。大規模なERP導入、グローバルSCMの再設計、新工場の立ち上げ——こうしたプロジェクトは、外から見ると「IT経験」として非常に高く評価されます。しかし、その経験を積む機会は、今いる会社にいるからこそ得られるものです。
転職市場の変化を知ったうえで、「今の会社でどんな経験を積むか」を戦略的に考える。そのうえで、数年後に改めてキャリアの選択肢を広げる——そういうアプローチが、結果として市場価値を高めることにつながるケースを、私は何度も見てきました。
キャリアの選択肢は、転職か現状維持かの二択ではありません。今の場所で戦略的に経験を積むことも、立派なキャリアアップの形です。
まとめ:専門性×IT経験が、これからの市場価値をつくる
「ITテックバックグラウンドがない」という言葉の裏にある専門性は、転職市場で確かに評価されます。ただ、その専門性にIT・DX・データ活用の経験が加わることで、市場価値はより広がります。
今すぐ転職を考えていなくても、今の会社でDXやIT関連のプロジェクトに関わる機会を積極的に探してみてください。その経験が、5年後の選択肢を確実に広げます。
製造業・メーカー出身者の専門性は、これからの時代にこそ必要とされています。「ITがない自分はダメだ」ではなく、「専門性にITの経験を加えていこう」という視点で、次の一手を考えてみてください。
もし現在のキャリアについて具体的に話したいという方がいれば、ぜひ一度ご相談ください。転職を前提としないご相談も歓迎しておりますので、お気軽にお声がけください。
よくある質問(FAQ)
ITテックバックグラウンドがないと、コンサルへの転職は難しいですか?
IT経験がないことだけを理由に、コンサルへの転職の可能性が閉ざされるわけではありません。ただ、近年はDXやデータ活用に関連するプロジェクトが増えており、IT・デジタル領域の経験があると選択肢が広がりやすいのは事実です。製造業の深い専門性を持ちながら、現職でDX関連の経験を積んでいくことで、転職の可能性は十分に広がります。
製造業・メーカー出身者がコンサルで評価されるのはどんな経験ですか?
製造技術・品質管理・生産管理・SCM・研究開発などの専門知識に加え、大規模プロジェクトのマネジメント経験、クロスファンクショナルなチームのリード経験、グローバル対応の実績などが評価されやすいです。さらにERP導入やDX推進への関与があると、より幅広いプロジェクトへのアサインが期待されます。
DXやAIの経験は、今の会社にいながら積めますか?
積める可能性は十分あります。社内のDX推進プロジェクトへの参加、ERP刷新の業務側リーダー、AIやIoTを活用した現場改善の実証実験への関与など、手を挙げることで関われる機会は製造業の現場にも増えています。システムを自分で構築する必要はなく、「業務側の責任者」として関わるだけでも実務経験として評価されます。
ITテックバックグラウンドとは具体的にどんな経験を指しますか?
一般的には、ITシステムの企画・導入・運用に関わった経験を指します。ERP・MES・PLMなどの業務システムの導入プロジェクト、データ分析基盤の構築、クラウド移行、DX推進施策のリードなどが代表例です。エンジニアとしてコードを書く経験だけでなく、業務側のリーダーとしてITプロジェクトを推進した経験も、転職市場では「IT経験」として評価されます。
40代・50代からでもITスキルを身につけてキャリアチェンジできますか?
年齢を理由にキャリアチェンジの可能性が閉ざされることはありません。ただ、40代・50代の方に求められるのは「ITスキルの習得」よりも「専門性とITをつなぐ経験」です。現職でDXプロジェクトをリードした実績や、データ活用による業務改善の成果などを積み上げることが、キャリアチェンジへの現実的な道筋になります。
ERPやMES・PLMの導入経験は転職市場で評価されますか?
評価されます。特に製造業向けのコンサルプロジェクトでは、これらのシステムに関する業務知識と導入経験を持つ人材の需要は高い状況です。「ベンダー側」ではなく「ユーザー企業側」での経験であっても、業務要件の整理や現場調整を担った実績は十分に評価対象になります。
コンサルファームはなぜIT関連プロジェクトを重視しているのですか?
クライアント企業の経営課題が、DX推進・業務システムの刷新・データ活用による意思決定改革など、ITと密接に絡むテーマにシフトしているためです。コンサルファームはクライアントの課題に応えるために人材を採用しますので、市場のニーズが変わればファームが求める人材像も変化します。これはIT重視への「厳格化」ではなく、時代の変化に伴う自然な流れです。