生産管理やSCMの仕事を職務経歴書に書こうとすると、計画の調整、納期の確認、在庫の管理といった担当業務の一覧になりがちです。毎日の調整に追われてきた方ほど、「特別なことはしていない」と感じるかもしれません。
ここでは、メーカーの生産管理・調達・SCMの部門で働いてきた方に向けて、その経験をITコンサルの要件定義の言葉に置き換える方法を提案します。私は研究開発の出身で、生産管理やSCMを担当していたわけではありません。ただ、技術員研修で生産管理・SCM・品質保証の部署に3か月いたことがあり、日々の調整がどれだけ多くの判断でできているかは、そのとき間近で見てきました。
日々の調整の中にも、仕組みを変えた経験はないか
ITコンサルへの転職を考えるなら、担当業務の一覧から一歩進めて、ルールや情報の流れを変えた仕事がなかったかを振り返ってみてください。
日々の調整をしていたことと、調整が必要になる原因を整理して仕組みを変えたことは、分けて説明できます。どちらかを大きく見せる必要はありません。自分が関わった範囲を正確にすることが出発点です。
候補者の方とお話ししていると、「何をしたか」は詳しく話せるのに、「何を判断したか」になると言葉が止まる方が少なくありません。生産管理の仕事では、判断が日々の段取りの中に埋もれてしまうからだと思います。ところが、コンサルの選考で知りたいのは、まさにその判断の部分です。
経験を「業務・データ・例外・合意」に分ける
| 観点 | 整理する質問 |
|---|---|
| 業務のルール | 誰が、いつ、何をもとに計画や優先順位を変えるのか |
| データ | 判断に必要な情報はどこから来て、誰が確認するのか |
| 例外 | 通常の手順で処理できないとき、何を確認して判断するのか |
| 合意形成 | 営業・調達・生産・物流などの条件を、どう整理したのか |
この四つは、応募書類に書くためだけの質問ではありません。自分の経験が業務の理解に寄っているのか、要件の整理に寄っているのか、プロジェクトの推進に寄っているのかを考えるための軸です。
たとえば「例外」の欄が一番書きやすい方は、通常の手順では回らない場面で、何を確認し、誰に相談して決めてきたかが強みになります。これは、システムに乗せる業務ルールと、人が判断する部分を切り分ける要件定義の仕事と近い考え方です。
改善の話を、ツールの導入で終わらせない
「表計算で管理表を作った」「システムを導入した」という事実だけでは、何を改善したのかが伝わりません。判断が遅かったのか、情報の定義がそろっていなかったのか、例外の処理が特定の人に集中していたのか。先に、どんな問題だったのかを整理します。
そのうえで、変えた業務ルール、そろえた情報、見直した確認の手順を書きます。自分がツールを開発していなければ、開発したようには説明しません。業務側で要件や受け入れの条件をまとめたのであれば、その担当範囲を具体的にします。
成果の数字を出せる場合も、何を測った数字なのかを確認してください。根拠を説明できない削減率を書くより、実際に変えた運用と、変わったことをどう確認したかを書く方が、正確に経験を伝えられます。
書き方の全体像は、ITコンサルタントの職務経歴書 完全ガイド(無料PDF・書き込み式テンプレート付き)にまとめています。
ITコンサルのどの役割を考えるか
業務改革を整理する仕事、システムの要件を具体化する仕事、導入を進める仕事、稼働後に定着させる仕事。まずは、関心のある役割を分けてみてください。すべてを一度に担当したいと考えると、求人の違いが見えにくくなります。
求人票に「SCM」と書かれていても、対象が計画・調達・生産・物流のどこなのかを確認します。次に、求められているのが業務の経験なのか、特定のシステムの設計・設定なのか、案件の管理なのかを見ます。名称が同じでも、自分の経験との距離は求人ごとに違います。
「コンサル未経験だから」「特定のシステムを触ったことがないから」と、募集要件だけを見て応募先を自分で減らしてしまう方もいます。求人票の「製造業経験」「SCM経験」という言葉の中身は、「業界未経験だから無理」と決めつける前に。求人票の“業界経験”を分解して読む方法で詳しく書いています。
面接で話す順番を決める
最初に対象の業務、次に問題と制約、その後に自分の判断と関係者との合意、最後に何が変わったかと残った課題を説明します。この順番なら、社内の事情を知らない相手にも、経験の構造が伝わりやすくなります。
「自分一人で変えた」と言う必要はありません。チームの仕事であれば、自分が整理した情報、作った提案、担当した検証を分けて話します。課題が残ったのであれば、次に何を改善すべきだと考えたかも話せるようにしておきます。
同じ製造業でも、生産技術からの移り方は論点が少し違います。そちらは生産技術からITコンサルへ|職務経歴書に書くべき「判断」と「制約」にまとめています。
求人面談で確認したいこと
次の三つは、経験の接点と足りない部分の両方を確認できる質問です。
- 自分の業務経験を、どの工程で使う想定ですか
- システムの設計を担当する人との分業は、どうなっていますか
- 入社時点で必要な技術の経験と、入社後に学ぶ部分を分けて教えてください
社名や職位だけで選ぶ前に、実際に担う仕事を聞いてください。専門知識を使うだけの仕事なのか、それをもとに業務や仕組みを変える仕事なのかも、自分の希望と照らして考えたいところです。製造業DXの案件で担う責任の見分け方は、製造業DXのPM求人を選ぶ|技術選定・データ移行・運用の責任を確認するも参考になります。
転職しないで広げられる経験もある
現職で、業務部門とIT部門をつなぐ役割や、社内のDX・業務改革のプロジェクトに手を挙げられるなら、転職せずにその経験を得る選択もあります。反対に、担いたい役割に進む機会が限られているなら、転職先の仕事と比べる理由になります。
生産管理・SCMの経験を活かすには、業務の名前を増やすより、変えたルールと自分の判断を整理することです。そこから、どの求人を検討するかを考えていけば十分だと思います。過去の経験は無駄になりません。
よくある質問
生産管理の経験だけで、ITコンサルに応募できますか
応募できる求人はあります。ただし、業務の知識を活かす役割なのか、システムの要件を決める役割なのか、案件を管理する役割なのかで、求められる経験が変わります。自分の経験を「業務・データ・例外・合意」に分けて、どの役割と重なるかを確認してから判断してください。
生産管理システムを導入した経験がない場合、何を書けばよいですか
システムの導入に関わっていなくても、業務ルールを見直した経験、情報の定義をそろえた経験、例外の判断を整理した経験は書けます。ツール名より、どんな問題をどう整理したかを優先してください。
改善の数値を出せない場合はどうすればよいですか
無理に削減率を作らないでください。変えた運用、見直した確認の手順、判断が集中していた箇所をどう分けたかなど、事実として説明できる変化で十分です。社外秘の数値や取引先の情報は書きません。
自分の経験と次の役割を整理する
応募先を決める前に、担当してきた仕事と、これから担いたい責任を整理できます。相談は転職を決めることと同じではありません。現職に残る選択も含めて比べます。